静かな声でもいいんだ

月明かりに照らされた暗い部屋と、静かに湯気を立てるマグカップが置かれている様子。A dimly lit room illuminated by moonlight with a mug gently steaming on the table. 静かな声
静かな夜。声にならない想いが、湯気のようにただ上がっていく。A quiet night. Thoughts rise wordlessly, like steam in the moonlight.

声を大きくするのは、好きじゃない。
強く言い切る言葉や、勢いで押し切る意見のぶつかり合いが、どうにも苦手だ。

昔からそうだ。
教室でも、職場でも、SNSでも——みんなが声を張り上げている場所にいると、胸のあたりがきゅっと固くなる。
大きい声が勝つ世界では、静かに話す人の言葉は、なかったことにされてしまうことがある。

でも、静かな声だからこそ届くものがあるんじゃないか。
最近、そんな風に思うようになった。

月明かりの夜、本棚から本を手に取ろうとする静かな瞬間。A quiet moment of reaching for a book on a shelf under the moonlight.
静かな夜に、心に触れる言葉を探す。Searching for words that speak to the heart on a quiet night.

「届かない」と思っていた頃のこと

少し前の僕は、伝えるには声を強くしなきゃいけない、と思いこんでいた。

「しっかり言わなきゃ理解されない」
「目立たなきゃ存在してないのと同じだ」

そうやって、必要以上に力を入れて言葉を押し出したことがある。
けれど、そういう時の言葉は、どこか固かった。
相手に届かせようとしているはずなのに、どこかで自分が自分を追い込んでいた。

声を強くすることは、“強さ”とは限らない。
ただ、必死だったんだと思う。
届かないのが怖かっただけだ。

静かな声にも、ちゃんと輪郭がある

少し前、ブログに書いたある文章に、ひっそりとした返信が届いたことがあった。

「大きな励ましではないけれど、そっと寄り添ってくれるようで、救われました」

派手でもない、いいねが数百つくわけでもない。
でも、その言葉を読んだとき、胸の深いところがゆっくり温まっていった。

静かな声は、ただ小さいだけじゃない。
それは、相手に自分の呼吸で届く距離まで近づく声 なんだと思った。

静かだからこそ、伝わる温度がある。

「弱さ」ではなく「選んだ強さ」

静かな声は、消極的でも、無力でもない。

怒鳴らない。
煽らない。
押しつけない。

その代わりに、

聞く。
待つ。
感じる。

せわしく流れていく世界の中で、立ち止まるという選択ができること。
それはきっと、強さのひとつだ。

大きい声が多い世界で、静かに在ることは、むしろ勇気だと思う。

小さな波紋は、確かに広がっている

ブログを書き続けていると、数字には現れない反応がある。

たとえば、
・しばらく経ってから届く感想
・そっとブックマークだけしてくれた人
・ふとした時に「また読み返しました」と言ってくれた人

それは、水面に落ちた小さな石がつくる波紋に似ている。
一気に広がらない。
でも、確実に、遠くまで、静かに届いていく。

僕は派手な波を起こしたいわけじゃない。
誰かの心に、もう一度呼吸を取り戻す余白 が生まれるなら、それだけで十分だ。

結び — 静かでも、確かにここにいる

いま僕は、無理に声を張ろうとは思わない。

届くかどうかを、結果で決めたくない。
届いたかどうかは、いつだって相手の時間の中で起こることだから。

静かな声は、消えていない。
少し深い場所を流れているだけだ。

だから、今日も書く。
急がず、競わず、押しつけず。
ただ、自分の高さで。

静かな声でもいいんだ。
その声でしか届かない人が、確かにいるから。

ときどき考えることがある。
「静かな声でいること」と「何も言わないこと」は、全然ちがうということを。

黙っているのは、自分を閉じること。
けれど、静かに話すというのは、むしろ心を開く行為だと思う。
相手の感情や体温を感じながら、言葉を置く場所を選ぶ。
それは決して弱さではなく、むしろ丁寧さに近い。

思えば僕は、音楽でも写真でも、派手な色よりも、
余白があるほうに惹かれてきた。
構図の中に「語らない部分」があると、
その沈黙がかえって物語を呼び込む。
音も言葉も光も、強くするだけがすべてじゃないんだ。

静かな声は、ゆっくり伝わる。
すぐに反応が返ってこないこともある。
けれど、その遅さには意味がある。
時間をかけて浸透していく言葉は、急激に熱を持つ言葉より、
あとに残ることが多いからだ。

もし、誰かが画面の向こうで、
同じように大きな声に疲れているなら、
「それでもいいよ」と伝えたい。

世界は、走り続けなくてもいい。
声は、張り上げなくてもいい。
静かに呼吸して、静かに考えて、それでも届く場所がある。

僕はその場所を信じたいと思っている。

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A Quiet Voice Is Enough

I am not someone who likes to raise my voice.
It has always felt more natural for me to hold my thoughts quietly, to let them settle before they become words.
There were many times when I wondered if that was a weakness.
In a world that often rewards those who speak quickly and loudly, a quiet voice can seem like it disappears before it even reaches the air.

But recently, I have begun to think that perhaps a quiet voice has its own place.

月明かりの夜、本棚から本を手に取ろうとする静かな瞬間。A quiet moment of reaching for a book on a shelf under the moonlight.
Searching for words that speak to the heart on a quiet night.

A quiet voice does not press or overwhelm.
It does not try to win.
It simply stays close to what is true for the person who speaks it.
And maybe that is why it can reach places that loudness cannot—
the spaces in people where sound becomes feeling.

There are moments when silence speaks more accurately than speech.
Moments when we learn something not because it was explained, but because it was allowed to stay, unforced.
I think I have always been drawn to those moments—
to the gentle kind of learning that unfolds slowly, like light traveling through the morning air.

I used to think that expression required strength.
Now I think it requires honesty more than volume.
And honesty does not need to shout.

Still, to speak at all means choosing to be seen.
There is always a small fear that comes with that.
The fear of being misunderstood, dismissed, or simply unnoticed.
But there is also hope.
A soft hope that says, Maybe this will reach someone who needed it.

So I speak quietly.
Not because I cannot speak louder,
but because the quiet voice I carry is real, and I do not want to lose it.

We do not need to compete to be heard.
The world is not a contest of volume.
Sometimes, what stays in someone’s heart the longest
is the thing that was said softly, with care.

I am learning to trust the quiet voice.
To let it breathe.
To let it take shape in its own time.

And if it reaches even one person—
if it rests gently inside them for even a moment—
then that is enough.

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